26.【過去編】オシャレ帽子さん⑥

知らない番号からの着信。

知らない女の人の怒鳴り声。

私はすっかり怯えてしまいました。

『人の旦那に手を出しておいて無視するなんていい度胸じゃない!』

『このクズが!』

『こっちはもうすぐ子どもも産まれるのよ!』

『訴えてやる!』

ヒステリックな喚き声が延々とスマホから流れます。

なんでこんなに怒られているか。

一体この女の人は何のことを言っているのか。

全然わからなくて、怖くて、私はスマホを握りしめたまま泣いていました。

『ちょっと聞いてるの!?』

『何とか言いなさいよこの泥棒猫!』

女の人が怖くて怖くて、私はやっと言葉を発しました。

黙っているのもこれ以上何を言われるのかわからなくて怖かったのです。

「何のことをおっしゃってるのかわかりません」

ちゃんと言えていたかもわかりません。

でも、私のその言葉に女の人はさらに激高したようでした。

『白々しいこのブタ野郎!』

『私はオシャレ帽子の妻よ!』

頭を殴られたような感覚でした。

オシャレ帽子さん。

数か月前に婚活パーティーで出会って。

付き合って。

今日も2人でデートして。

そのオシャレ帽子さんの妻。

「オシャレ帽子さん、結婚していたんですか?」

とても間抜けな声だったと思います。

騙されていた。

悲しくて情けなくて、涙が止まりませんでした。

私が泣いている間にも、女の人――オシャレ帽子さんの奥さんの罵声は続きます。

オシャレ帽子さんに奥さんがいた。

しかも妊娠している。

だったら私は何?

頭の中ではそればかりがぐるぐる回っていました。

終わらないオシャレ帽子さんの奥さんからの罵声。

止まらない涙。

ごめんなさい、ごめんなさい。

知らなかったんです。

私はずっとそう謝り続けていました。

どれくらいそうしていたでしょうか。

ふっと、オシャレ帽子さんの奥さんの罵声が止みました。

低い、ゾッとするような声色に変わります。

「知らなかったみたいなので慰謝料は請求しません。でも、もう二度とオシャレ帽子には近寄らないでください」

そう言って、電話は切れました。

「慰謝料の請求」という言葉が、重く私にのしかかります。

知らなかったとはいえ、大変なことをしてしまった。

見ず知らずの誰かを酷く傷つけてしまった。

それと同時に、私の中にはまだオシャレ帽子さんを信じたい気持ちがありました。

あれはタチの悪い悪戯で、何も知らないオシャレ帽子さんからまた連絡があるのではないだろうか。

オシャレ帽子さんを好きな誰かが、私をからかうためにやったことではないのだろうか。

 

でも、1週間経っても2週間経っても、1ヵ月経ってもオシャレ帽子さんからの連絡は何一つありませんでした。

時間が経てば経つほどに、「あれは真実だった」「私は知らずにとんでもないことをしてしまった」という思いが強くなり、私の胸はとてつもなく痛むのでした。

 

私とオシャレ帽子さんの出会いは婚活パーティーです。

なので、もちろんオシャレ帽子さんは未婚であると信じ込んでいました。

だからこんな結末が待っていたなんて、少しも疑っていませんでした。

なのでこれから婚活を始める人、今婚活を進めている人には「もしかしたらこの人は既婚かもしれない」という疑いを少しでも持ってほしいのです。

そしてよくよく観察してください。

今思えば連絡が来る時間帯やデートの時間帯など怪しいところは満載でしたが、少しも疑っていない私にはそれが気付けませんでした。

本当にバカなことをしてしまったと思うのです。

 

もちろん、一番悪いのは奥さんを裏切って、男慣れしていないデブスな女子大生を騙したオシャレ帽子さんです。

でも、奥さんが気付いたように、私が注意深ければ気付くチャンスは少しでもあったかもしれません

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婚活ブタが既婚者に騙された話一覧はこちら
21.【過去編】オシャレ帽子さん①
22.【過去編】オシャレ帽子さん②
23.【過去編】オシャレ帽子さん③
24.【過去編】オシャレ帽子さん④
25.【過去編】オシャレ帽子さん⑤
26.【過去編】オシャレ帽子さん⑥